ルーペの見方

前回はペンポイントの形状の「馬尻」についてお話しました。いきなりマニアックな内容となってしまいました。本来はルーペの見方、そして理想的なペンポイントやペン先の状態を説明してから不良について説明するのが正しい順番だったと反省しております…。ペンポイントを見る際に必ず必要となってくるのはルーペです。ペンポイントは非常に小さいのでルーペも高倍率のものが必要です。理想としては25倍、30倍くらいです。しかし倍率と同じくらいに大切なのがレンズの綺麗さです。レンズが綺麗ではっきりと綺麗に見えるようであれば20倍でも大丈夫です。ペン先調整には段階があるのですがルーペで見る(診る)のが第一段階です。ルーペで見れないと調整はできませんが、ルーペで見るだけでストップするのも良い事だと思います。ルーペで正確に状態を把握できればそれだけでも技能の一部を習得したと言って良いかもしれません。ただし見ると診るは違う行為で「診る」を伴った「見る」でなくてはなりません。通常「見えている」と表現するのがルーペで対象物と焦点があった事を言うケースが多いです。ルーペで焦点を合わせるのも実はなかなか難しくてすぐにはできません。ですが1日、2日あればできると思います。しかしここからが長い旅です。焦点があってペンポイントが見えた。まずはペンポイントの形を見慣れていないと良い悪いの判別がつかないと思います。そして焦点を合わせられるのが3次元的に全ての方向から見れるようになるには一ヶ月近くかかるかもしれません。一ヶ月様々なペンポイントを見ていくと、それぞれ違うわけですから目に映るものが違うという事から認識が始まると思います。これがルーペで診る入口になります。良い悪いはわからなくともAとBが違う事のわかるというのは診る入口に立っているという事です。

ランダムに見ていって3次元的に見れだしたら(完璧にあらゆる角度で見れるようになるのはずっと先の事になります)次は字幅を意識すると良いと思います。まずはFとB次にEFとMと単位を細かくします。そうして慣れてくるとEEFやBBはちょっと驚きかもしれません。字幅が大まかに見れだしたらば基本が出来てきます。次はメーカー事の違いです。そんなにはっきりと区別できなくてもセーラー万年筆のBとプラチナ万年筆とパイロット万年筆のBは形が違う事に気づくと思います。そうしていろんなメーカーを見ていくとどんどん知識が無意識に加わり焦点を合わす技術が無意識に向上します。できればこの段階までは新品で不良でないペンポイントを見るのが理想です。

見慣れてくるとおかしさに気づき出します。以前の記憶と違うなどデータが蓄積されてきているからです。この段階までくると不良を認識し始める事ができるかと思いがちですが、そこは知識を補充しなくてはならず独学ですと少し難しいと思います。1人で習得できるのがまずはペンポイントの上下のズレだったり、切割りの開きだったりしますので、これがわかればとりあえず良いと思います。この段階でもペンポイントを変な形に研磨してしまうとわかるようになりますのでペンポイントを研ぐ事は非常に難しいというのが芽生えてくるはずです。逆にペンポイントを研磨し過ぎてしまうという事はこの初期段階のレベルに到達していないとも言えます。

これから先は本格的なルーペが見れる技術的なものになりますがここまでの段階にくるにも平均して一ヶ月くらいかかると思います。ルーペを見る事は万年筆を使用する上で必要ではありません。ルーペが見れないからどうという事は全くないです。興味があればやって見てくださいという程度です。でもペン先をいじりたくなってしまったら必ずルーペを見れるようになってほしいです。ここまでの段階であればセンスのあり無しは関係ないと思います。一定期間やればできるようになります。次の機会にはもっと踏み込んだルーペの見方について説明したいと思います。