宅配型のメリットについて

万年筆の修理・調整は全ての事例に必ず当てはまるわけではありませんが、分解することが基本にあると思っています。

今回はペン先調整にスポットを当ててお話いたします。分解をする事はペン先の状態を正確に把握する事、自在に操れる事が可能になります。

ペン先はペン先とペン芯が組み合わさり首軸にセットされた状態ではじめて筆記ができます。この状態が万年筆の完成され形です。ペン先を取り外してペン先単体の状態と組み合わせて首軸に差し込まれた状態とではペン先はまったく一緒ではありません。分解をする前にペン先の状態を確認して、分解をしてからペン先単体で状態を確認します。違いがある事が大半です。これは首軸内でペン先とペン芯が強くホールドされて抑圧され変形するからです。この2つを見比べる事は万年筆のコンディションと実態を把握するのにすごく有効です。まずはペン先単体で良い状態にします。切割りの開き具合やくい違いがない等…。次にペン芯の上に載せます。横から見て隙間がないかを確認します。ペン芯の上に載せただけでもペン先の状態が変化する事もあります。次に指で首軸に差し込まれた縁のラインあたりを抑えます。これである程度首軸内に差し込んだ状態を予測できます。この時点でおかしな点があれば修正します。目星がついたならば首軸に差し込みます。一回でバッチリとは行かず、手で抑えた模擬と実際に首軸内でホールドされた状態の差が出ます。再び外してやり直しです。簡単なケースでは一回で上手くいく事もありますが、逆にペン先の型がおかしくなっている場合は20回、30回と繰り返します。まさに一日がかりです。でもそうしてセットされたペン先とペン芯の安定感は抜群です。この基本があると簡単な事でコンディションが崩れなくなります。これで完結ではありません。並行して、またはその後ペンポイントの形状を形作ったり磨いたりします。でもその前段階の基礎工事である分解組み立ての工程が非常に大切です。

この分解組み立ては簡単に上手くいくラッキーなケースであれば短時間で済みます。でも短時間で上手くいかない方が多いと思って間違いありません。不具合は根本的な部分からあります。宅配のメリットはこの基礎工事を時間をかけて行える点にあります。